恋人同士でも夫婦同士でも自分の感情を曝け出さない人がいます。
元々の性格の影響もありますが、相手のことを信頼していない可能性もあります。
それどころか感情を見せると搾取されたりコントロールされるという危険を感じていることさえあります。
このようなタイプの人は誰に対しても心を開いてくれません。
感情を表現するのはリスクが伴う
感情を表現するのは大切なことです。
抑制し続けるとストレスが溜まります。
また自分がどう思っているか伝えることは親密な相手とのコミュニケーションにおいて必要なことです。
しかし感情を表現することにはリスクも伴います。無視されたり距離を置かれるという心配もあります。
特に、辛い、悲しい、不安といった感情を吐露することは自らの脆弱性をさらけ出すことでもあります。
それによって相手に操作されたり搾取されることもあるのです。
このようなリスクを避けるために、私たちは相手によってどこまで心を開くかきちんと調整しているのです。
心を開く度合いを調整する基準
心を開く度合いを調整する基準は何でしょうか?
それはどれくらいサポートしてくれるかという期待です。
つまり相手が自分をどれだけ気にかけてくれているのか、そして助ける意思をどれだけ持ってくれているのかという認識です。
もちろんそこに損得感情を感じ取ったら心は開きません。共同体としての強い絆を動機とするサポートが必要なのです。
「この人は愛情をもってサポートしてくれる」と強く感じるほどに開示する感情も増えていくのです。
相手が自分を助けてくれると思っている人ほど感情表現の機会が多い
相手から期待できるサポートと感情を表現する意欲について、イェール大学の研究者らが行った調査があります。
まず、118組のカップル(平均交際期間5.5年)を対象に、相手のために貢献したい意欲を確かめました。
どれくらい相手を助けたいと思っているか聞き取ったのです。また、相手はどれくらい自分を助けたいと思っていると期待できるかも聞き取りました。
そして、ポジティブな気分やネガティブな気分をどれだけ相手に開示するかということも確認しました。
それぞれの回答を分析したところ、相手が自分を助けてくれると思っている人ほど、良い感情も悪い感情も表現する機会が多いことが分かりました。
また、相手を助けたいと思っていると、相手の認識に関係なく、相手も感情を多く表現することも分かりました。
冷静な視点でサポートを提供するために
あなたがサポートの意思を見せることで、相手は安心して感情を表現することができます。
それを見たあなたは、信頼されている、サポートが望まれていると感じてケアを提供します。
そして相手はより信頼して感情を表現しやすくなるというプラスのサイクルが生まれます。
とは言ってもなかなか難しいものです。
特に結婚や同棲をしていると毎日のことですからイライラしてしまうこともあります。
相手の悲しみや怒りの感情が伝染して、自分まで感情的になることがあります。
すると「この人のせいで私まで不機嫌になってしまった」と感じてしまいます。それが雰囲気として伝わります。
すると余計に感情を表現したり、助けを求めることが出来なくなり、メンタルが落ちるという悪循環が生まれます。
このようなことにならないためにも自己分化が必要です。
いま心に浮かんでいるのは自分の感情なのか、相手の感情なのかきちんと分けて考えるのです。
心の境界線を明確にすることで、冷静な視点でサポートを提供することができるようになります。
参考文献:Von Culin KR, Hirsch JL, Clark MS. Willingness to express emotion depends upon perceiving partner care. Cogn Emot. (2018).