恋人との関係をもっと深めたい、大切な人に「ちゃんと愛されている」と感じてもらいたい――
そう思っていても、具体的にどうすればその気持ちが伝わるのか、悩むものです。
プレゼントやサプライズを準備したり、ロマンチックな言葉をかけたり…
どれも素敵な方法ですが、実はそうした特別な演出よりも、日常の中でのちょっとした言動こそが、相手に「愛されている」という安心感を届けるカギとなります。
心理学の研究によると、多くの人が「恋人から愛されている」と感じる日常の瞬間には共通点があることが判明しています。
「愛されている」と感じる3つの要素
人は恋愛関係の中で、どんなときに「愛されている」と感じるのか?を調べた、アラバマ大学とアリゾナ州立大学の研究者たちによる調査があります。
研究では、まず、大学生462人と社会人75人を対象に、「あなたが恋人からの愛を感じることを3つ挙げてください」という質問をしました。
参加者の自由回答をもとに、研究者たちは言葉の特徴や意味を細かく読み取りながら、共通する考え方やパターンを探っていきました。
このような手法は「グラウンデッド・セオリー(GroundedTheory)」と呼ばれ、参加者の生の声から理論を作り出すタイプの分析です。
研究者たちは数百件の回答をひとつひとつ読み込み、具体的な表現を整理し、それらを意味の近いものごとにまとめて、カテゴリ分けしました。
それらをさらに抽象的にまとめ、以下の3つの「愛されていると感じる要素」を明らかにしました。
1.ニーズに積極的に応えてくれること
最も多くの人が挙げていたのは、自分の気持ちやニーズに、相手がきちんと応えてくれることでした。
たとえば、疲れているときにそっと寄り添ってくれたり、落ち込んでいるときに励ましの言葉をかけてくれたり、具体的なサポートをしてくれるような行動です。
これには「好きだよ」「そばにいるよ」といった言葉や、手を握ってくれるなどのスキンシップも含まれます。
また、「何も言っていないのに察してくれたときに、愛されていると感じた」という回答も多く見られました。
こうした行動は、「自分の存在がちゃんと見られている」「理解しようとしてくれている」という感覚を生じさせ、それが愛されているという実感につながるのです。
2.本音でつながっていること
心から本音でつながることで、「愛されている」と感じるという人も多くいました。
たとえば、言いたいことを素直に言える、一緒にいてリラックスできる、些細なことで笑い合える、自分の考えや感情を真剣に受け止めてもらえる、といったことです。
このような関係では、相手に対して壁を感じず、ありのままの自分でいられるという安心感があります。
また、相手が自分の話をよく聞いてくれたり、何気ない日常の中でもちゃんと向き合ってくれていると感じられることが、深いつながりを築くきっかけになります。
ただ一緒に過ごすだけでなく、「心の距離が近い」と実感できるとき、人は強く愛されていると感じるのです。
3.安心できる関係であること
「愛されている」と感じさせてくれる3つ目の要素は、いつでも変わらずそばにいてくれるという安心感です。
困ったときにすぐに助けてくれる、ミスをしても責めずに受け入れてくれる、どんな状況でも味方でいてくれる、といったことです。
こうした安心できる関係というのは、日常の中で「この人は自分を裏切らない」と感じられる場面の、小さな積み重ねから生まれます。
また、見返りを求めない優しさや、自分の欠点も含めて受け入れてくれる態度も、「無条件に愛されている」という深い安心感につながります。
このような安心感のある関係は、一時的な情熱ではなく、長く続く愛の土台をつくるものとなります。
誰にとっても共通する「愛されている感覚」
この研究で興味深い点は、さきほどの「愛されている」と感じる3つの要素が、様々なバックボーンを持つ人たちに共通していたという点です。
年齢、性別、人種、収入といった違いがあっても、恋人からどんなふうに接してもらったときに「愛を感じるか」ということには、意外にも共通点が多く見られました。
つまり、「人が愛されていると感じる瞬間」は、文化やライフスタイルの違いを越えて、ある程度共通しているのです。
どんな立場の人手も「わかってもらえている」「大切にされている」「信じられる」という感覚を求めていることが、この研究から見えてきました。
中でも特に、多くの人が「愛されている」と感じる要素は、「ニーズに応えてもらえること」でした。
これはすべてのグループで最も多く挙げられており、年代や性別を問わず、「自分のことを気にかけて、ニーズに応えてくれた」と感じることが、愛の実感につながっていることがわかります。
「愛されている」と感じる頻度が多い人ほど恋愛の満足度も高い
恋愛において「愛されている」と感じることは、安心感や満足感、そして関係を続けていくうえでの力になります。
今回の研究では、その感覚が特別な場面ではなく、日常の中の小さなやりとりから生まれていることがわかりました。
高価なギフトや映画のような演出よりも、「気にかけているよ」「あなたを大事に思っているよ」という、さりげない言葉や行動が何より大きな意味を持つのです。
さらに研究では、愛されていると感じる頻度が多い人ほど、恋愛関係への満足度も高い傾向があることが示されていました。
つまり、こうした感覚は一時的なものではなく、関係全体の質にも関わっているということです。
恋愛関係をより良いものにしたいと思ったとき、まずは「自分がどういうときに愛されていると感じるのか」を見つめ直すことが大切です。
そして、それを相手に伝えたり、逆に相手がどんなときに愛を感じるのかを知る努力をしてみてください。
お互いの「愛の受け取り方」がわかると、言葉や行動のひとつひとつが、もっと相手に届くようになります。
参考文献:Chen, Y., Xia, M., & Dunne, S. (2024). Romantic Love is Not Only “Romantic”: A Grounded Theory Study on Love in Romantic Relationships.