明治安田生命の「いい夫婦の日」に関するアンケートによると、2022年に結婚した夫婦のうち22.6%がマッチングアプリによって出会っているそうです。
5組に1組はマッチングアプリがきっかけとなっているのです。
当方に恋愛カウンセリングに来る人もマッチングアプリで出会ったという人が年々増えています。
データを取ったわけではありませんが3割から5割はいるのではないでしょうか。
マッチングアプリで出会い、良いお付き合いができると、このままずっと一緒にいたいと思い結婚を意識するのが自然な流れです。
しかし、そこで一つの疑念が生じます。
マッチングアプリで知り合った相手と結婚して後悔しないだろうか?ということです。
この不安を相談されることも少なくありません。
結婚を前提に付き合っていても、ちょっとしたことで喧嘩した時などに「マッチングアプリなんかで知り合ったから、やっぱりお互いに理解できないんだ」と思ってしまうこともあります。
しかしそれは勘違いです。
出会いのきっかけがマッチングアプリだからといって結婚生活がうまくいき難いなどということはありません。
むしろ、マッチングアプリで出会ったカップルの方が幸せな結婚生活を送っています。
そして離婚率も低いです。
ネットで結婚した人のほうが満足度が高く離婚率も低い
インターネットを介して出会った場合と、現実世界で出会った場合では、結婚の満足度や離婚率に違いが生じるのかを調べた大規模な調査があります。
シカゴ大学のジョン・カチョッポ教授らが、2005年から2012年までに結婚した19,131人を対象に行ったものです。
対象となった人達の3分の1以上がインターネットを通じて配偶者と出会っていました。
離婚率と結婚満足度の違い
まず離婚率についてですが、出会いのきっかけがインターネットの場合は5.96%でした。
そして職場や学校といった現実世界で出会った場合の離婚率は7.67%とこちらのほうが高い数字になりました。
次に結婚の満足度についてですが、これは「1:非常に不満」から「7:完璧」までの7段階で評価しています。
こちらも、インターネットが平均5.64だったのに対し、現実世界は5.48でした。
結婚の満足度もネットで出会った人たちのほうが高かったのです。
※他の調査では結果が逆転しているものもありますが差は軽微です。つまりマッチングアプリで結婚しても不利ということにはなりません。
最も満足度が高いのはオンラインゲームで知り合った人達
この調査でのインターネットの出会いにはマッチングアプリ以外にもメールやSNS、チャット、オンラインコミュニティなどあらゆるものが含まれています。
その中で最も結婚満足度が高かったのは、オンラインゲームで出会った人たちでした。次いでSNS、マッチングアプリとなっています。
現実世界で出会った人たちの中で最も結婚満足度が低かったのはブラインドデート(知人の仲介により見知らぬ2人が1対1でデートする方法)でした。
その次に満足度が低いのが職場を含む仕事関係で出会った人たちで、その次がバーやクラブで出会った人たちでした。
心理学者が作ったマッチングアプリで出会った人の満足度が最も高い
マッチングアプリの中で最も満足度が高かったのは「eHarmony」というアプリを使っていた人たちです。
単独で見れば、オンラインゲームで出会った人たちより満足度が高いです。
このアプリは心理学者のニール・クラーク・ウォーレン博士らによって作られたものです。
性格傾向によって相性を診断するモデルが組み込まれていますから、うまくいきやすい相手と出会える可能性が高いのです。
ここに現実世界での出会いよりも、マッチングアプリでの出会いのほうが良い結婚ができるヒントがあるといえます。
分母が少ないと良い相手と結婚できる確率が減る
私たちは狭い交友関係の中で相対的な評価をして最も素敵だと思う人を選んでいます。相対的にナンバーワンなだけなのです。
それにも関わらず世界に1人だけの運命の人、絶対的なオンリーワンと勘違いしてしまうのです。
相対的に選んでいるからこそ分母は多いほうがより良い相手を見つけることができます。
結婚適齢期に現実世界で出会う恋愛対象となり得る相手というのは多くても数十人ではないでしょうか?
そんな少ない中から選んだ相手と、数万人から数百万人が登録しているマッチングアプリの中から、自分の好みでソートをかけて選んだ相手では、どちらが相性が良い可能性が高いでしょうか?ということです。
しかも最近のマッチングアプリはAI(人工知能)によって相性の良い異性をレコメンドしてくれる機能も備わっています。
AIは凄まじいスピードで発展していますし、データも蓄積され続けていますから、現実世界で結婚相手を見つけるよりも、良い結婚ができる可能性はどんどん高くなっていくでしょう。
マッチングアプリで結婚すると後悔すると思う理由
あなたがマッチングアプリで出会った相手と結婚すると後悔するかもしれないと思ってしまうのはなぜでしょう?
それはその出会い方に対していかがわしいもの、周囲から評価されないものという思いを強く持っているからではないでしょうか?
確かにこのようなイメージはいまだに残っています。結婚式で「二人はマッチングアプリで出会い」と紹介されることはありません。
「内閣府の少子化対策に関する意識調査」では結婚相手との理想の出会いの場所の1位は職場や仕事です。次いで、友人・兄弟姉妹の紹介、学校という順番です。
理想の出会い方に「出会いを仲介するインターネット上のサービス」を挙げている人は約5%しかいません。
多くの人が現実世界で出会い、そこから愛が育まれるのが良いと思っているのです。
実際に配偶者と出会った場所として最も多いのは職場の同僚などです。
理想の出会い方は「特にこだわらない」という人が一番多い
しかし、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では職場や仕事関係で出会って結婚している人は年々減っていることが分かっています。
それに対して「その他」という項目は年々増えています。
この調査に「マッチングアプリ」という項目はありませんから、「その他」を増やしているのはマッチングアプリで出会った人たちと考えられます。
冒頭に紹介した明治安田生命のアンケートでもマッチングアプリで出会って結婚している人の割合が年々増えていることが分かっています。
また先程の内閣府の調査では、男性が理想とする出会いのきっかけとして最も多いのは「特にこだわらない」でした。
女性でも職場で出会いたいと思っている人と同じくらいの割合でこだわりのない人がいました。
あなたが心配しているほどに、マッチングアプリでの出会いは評判の悪いものではないのです。
そして今後、さらにマッチングアプリで結婚する人の割合は増えていくでしょう。
というよりも、良い相手と結婚したいならAIが搭載されたマッチングアプリを使用するのが最も有効な手段という認識はどんどん広まっていくと思います。
マッチングアプリの結婚で後悔するとしたら…
マッチングアプリで結婚して後悔することがあるとすれば、数多くの選択肢があることを知ってしまったが故に、喧嘩をしたときなどに「他の人のほうが良かったのかな?」と思ってしまう可能性があることでしょう。
選択肢が多すぎるせいで、自分の決定に絶対的な自信が持てなくなるのです。
しかし、これはあなたの心構えの問題といえます。
マッチングアプリで結婚するからうまくいかないのではないのです。
パートナーとの対立が生じたときに、「やっぱりマッチングアプリで出会ったからだ」と考えてしまう思考回路がうまくいかなくしているのです。
参考文献:John T. Cacioppoa, Stephanie Cacioppo, et al. (2013). Marital satisfaction and break-ups differ across on-line and off-line meeting venues.