彼氏より彼女のほうが年収が高いとうまくいかない理由

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彼氏よりも年収が高い女性が相談に来るとき、その悩みは大まかに2パターンあります。

「引け目を感じさせているのではないか」という悩みと、「稼がない男と一緒にいて大丈夫か」という悩みです。

このどちらの悩みであっても、自分自身の根本的な価値観を変えない限り、関係はうまくいかないでしょう。

なぜなら、こうした悩みが生じる根底には「男とはこうあるべき」というジェンダーバイアス(男女の役割についての固定的な観念)があるからです。

カップルの関係を上手くいかなくさせるのは、彼氏の年収が低いという事実ではなく、このジェンダーバイアスなのです。

彼氏の年収が低いと関係満足度が下がる

カップル双方の社会的地位と、それに対する認知が、関係の満足度にどんな影響を与えるのか検証した、ユトレヒト大学の研究チームによる調査があります。

この調査では94組のカップルを対象に、それぞれの職業や収入、教育水準といった社会的地位に関する情報を回答してもらいました。

また、自分自身とパートナーについて、以下の心理的属性を評価してもらいました。

  • 支配性(例:「支配的だ」「利己的だ」「冷たい」など)
  • 弱さ(例:「自信がない」「弱々しい」など)

また、「この関係に満足している」「理想的な関係だと思う」などの項目に基づく、関係満足度についても聞き取りました。

これらを分析したところ、女性のほうが社会的地位が高いカップルでは、男女ともに「女性が主導していて、男性が弱く見える」と感じやすいことが分かりました。

そして、男性自身もしくはパートナーである女性が、「男性側の弱さ」を認識していると、関係に対する満足度が低くなることも分かりました。

彼氏の年収や地位が低さではなく価値観が問題

この調査から何が言えるかというと、二人の関係満足を低下させる原因は、男性の年収や地位が低いことではなく、それを弱さと認識することだということです。

女性のほうが収入や学歴、職業的地位で上回っている場合、二人とも無意識に「女性のほうが強い」「男性のほうが弱い」と感じやすくなります。

これは、昔から続いてきた「男性が主導すべき」「女性は控えめであるべき」といった性別のステレオタイプに反しているため、違和感や不安、プレッシャーにつながりやすくなります。

特に男性が「自分は弱く見られている」と感じると、プライドや自尊心が傷つき、関係に対する満足度が下がりやすくなります。

また、女性も「自分が主導していることが彼にとって負担かもしれない」「あまり好かれていないかも」と感じることがあり、これも満足度を下げる要因になります。

このように、事実そのものよりも、伝統的な性別役割に基づいた価値観が、女性の方が社会的地位の高いカップルの満足度を低下させているのです。

無意識に彼氏を下に見てしまう彼女

ここまでの説明を見て、「私はジェンダーバイアスなど持っていない、彼氏のことを年収で判断していない」と思う女性も多いと思います。

しかし、そのような女性でも悪気なく無意識に、彼氏を下に見てしまっているケースは多いです。

相談に来ている女性が、「彼氏は稼ぎたいとか、出世したいという気持ちはないみたいです」と言うことがあります。

私が「本人がそう言っているのですか?」と聞くと、「言ってはいないけれど、そんな気がします」と答えます。

これは、かなり危険です。

なぜなら、こうした判断の根底には「年収が低いのは本人に稼ぎたい気持ちがないから」という思考があるからです。

高収入の女性は自分が優秀なので、「稼ぎたいと思えば稼げる」と思っています。逆にいえば「収入が低いのは本人がお金に興味がないから」と思っているのです。

しかし、世の中には稼ぎたくても、能力が低いがために稼げない人もいるのです。

あなたの彼氏だって本当は稼ぎたいという気持ちがあるかもしれないのです。

しかし、あなたは「彼氏はお金に興味がないから年収が低い」と思っています。

逆の側面から見れば「お金に興味があるのに稼げないなんてあり得ない」と無意識に思っているのです。

こういった思考は言動から何となく伝わってしまいます。それによって彼氏は自尊心が傷つけられ、一緒にいると辛くなってしまうのです。

彼氏よりも年収が高い女性は、ジェンダーバイアスだけではなく、年収の決定要因に対する無意識の偏見がないかも確認しましょう。

子育てやキャリア形成にも影響

教育機会の拡大やキャリア選択の多様化により、高収入の女性は珍しくなくなりました。

しかし、恋愛関係においては、「男性は稼ぎ手であるべき」「女性は支える側であるべき」といった伝統的な性別役割が今なお強く残っています。

こうした社会環境の中で、二人の関係をうまくいかせるには「柔軟な認知」が必要です。

性別にとらわれずに家事や意思決定を分担しているカップルや、得意分野に応じて役割を調整しているカップルは、相手の収入や社会的地位にかかわらず、高い関係満足度を維持していることが研究でも分かっています。

特に男性側が性別役割のプレッシャーから解放されることによって、安心感や自己肯定感が高まり、関係の質が向上することも指摘されています。

さらに、こうしたバランスの良い関係性が、個人の幸福感だけでなく、子育てやキャリア形成といった将来的なライフイベントにも好影響を与えることも分かっています。

たとえば、性別に捉われない協力的な関係を築けているカップルは、育児や仕事の負担が偏りにくく、長期的にも持続可能な家庭運営ができるのです。

性別に由来する社会的な期待から自由になり、お互いの力を補い合える関係を築くことで、収入差を乗り越えることができます。

参考文献:Vink, M., Derks, B., Ellemers, N. et al. (2022). Penalized for Challenging Traditional Gender Roles: Why Heterosexual Relationships in Which Women Wear the Pants May Be More Precarious.