恋愛相談を受けていると、どう考えてもロマンス詐欺に引っ掛かってるでしょう、という状況の方に出くわすこともあります。
しかし、本人は「彼は仕事で海外を飛び回ってるから連絡が付きにくいだけ」「彼女はお母さんの看病で忙しいから会う時間がないだけ」などと言って、騙されていることに全く気付いていないのです。
中にはネットで知り合って、一度も会ったことがない相手に何十万、何百万と送金してしまっている人もいます。
ロマンス詐欺に引っ掛かる人というと、頭の悪い人とか、人生経験の浅い人と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
いわゆるエリートと呼ばれるような人や、中年以降の人でも簡単に引っ掛かってしまうのです。
それなりの地位を得ていることで「まさか自分が騙されるわけはない」という自信を持ちやすくなってしまうことが影響していることもあります。
そこで今回は、ロマンス詐欺に引っ掛かりやすい人の特徴について説明します。
ロマンス詐欺に引っ掛かる人の特徴
サイバー犯罪などを専門とする、ウォーリック大学のモニカ・ホウィッティ博士の研究があります。
この研究では約11,000人を対象に、ロマンス詐欺に遭ったことのある人とない人の違いを分析しています。
そこから、ロマンス詐欺に引っ掛かる人には次のような特徴があることが分かりました。
1. 中年女性
今回の研究では年齢を若年層(18~34歳)、中年層(35~54歳)、高齢者(55歳以上)の3つに区分しています。
その中で最もロマンス詐欺に引っ掛かっていたのが、中年層でした。被害者のうち63%がこの区分に該当します。
そして性別については被害者の60%が女性となっており、男性よりも女性の方がロマンス詐欺に遭いやすいという結果が得られました。
中年層は比較的安定した収入を持ち、経済的に余裕があることがロマンス詐欺に引っ掛かる原因として挙げられます。
また、この年齢層は家族の成長や離婚、パートナーの喪失など、人生の転換期に直面していることが多く、心理的に孤独を感じやすいことも一因です。
詐欺師はこの孤独感に付け込み、被害者に近づくことで信頼を得ようとします。
また、中年層の女性はデジタル技術に対する警戒心が薄い人が多いともいわれています。
2. 高学歴
高いレベルの教育を受けた人は一般的には詐欺に引っかかりにくいと考えられています。
しかしこの研究ではこれに反する結果が得られています。
つまり、高学歴の人もロマンス詐欺の被害に遭いやすいことが示されています。
高学歴の人は、自分の判断力や知識に自信を持ちすぎる傾向があり、それが逆に詐欺に対する警戒心を低下させることが原因です。
「自分は詐欺が騙されるわけがない」という過信から、詐欺師の手口に気づかずに引き込まれてしまうのです。
また、サイバーセキュリティに対する知識があるからといって、ロマンス詐欺に引っ掛かりにくいということもありませんでした。
3. 衝動性が高い
ロマンス詐欺の被害者に共通する心理的特徴として「衝動性」が示されました。
衝動性とは、深く考えずに即座に反応する傾向を指し、その一部である「緊急性」と「感覚追求」が特に強く関連しています。
緊急性が高い人は、予期しない状況や急を要する状況に直面した際に、即座に行動を起こす傾向があります。詐欺師はこの特性を巧みに利用します。
そのため詐欺師に「今すぐに対応しないと取り返しのつかないことになる」と言われたときに、深く考えることもなく要求に応じてしまうのです。
また、感覚追求が強い人々は、新しい経験や刺激を求める傾向があり、詐欺師が提供する魅力的なシナリオに引き込まれ、そのまま騙されてしまうのです。
4. 依存性がある
依存性もまた、ロマンス詐欺の被害者に共通する心理的特徴の一つとして明らかになっています。
依存性の高い人は詐欺師からの肯定的なフィードバックや愛情表現に執着します。
そして「騙されてるかもしれない」という疑念が生じたとしても、詐欺師との関係を断ち切る決断を下すことが難しく、結果として詐欺に巻き込まれ続けるのです。
詐欺師はこの心理的な弱点を利用して、被害者が逃げ出す機会を奪い、詐欺を続行させるのです。
5. 他者への信頼感が高い
ロマンス詐欺の被害者には、他者に対して高い信頼感を持つ人が多いことも明らかにされています。
詐欺師は信頼感を利用し、巧妙に接近してきます。親しみやすい言葉遣いや態度を取ることで、被害者に安心感を与え、疑念を持たせないようにします。
他者への信頼感を持つ人は、詐欺師が示す親切さや共感に対して心を開きやすくなり、詐欺師の要求に応じてしまうのです。
6. 親切じゃない
意外なことに親切な人よりも、親切でない人のほうがロマンス詐欺に引っかかりやすい傾向にありました。
親切心が低い人は他者と積極的に関わろうとせず、社会的な繋がりが乏しい傾向があります。
そのため、詐欺に巻き込まれた際に、周囲に相談したり、助言を求められないことが原因と考えられます。
詐欺師はこのような孤立した状況をさらに悪化させる戦略を取ります。被害者を心理的に支配し、他者との連絡を断たせることで、詐欺から抜け出す手段を封じ込めるのです。
このようにして被害者はますます孤立し、詐欺師に依存せざるを得ない状況に追い込まれていくのです。
ロマンス詐欺に騙されないために
ロマンス詐欺から身を守るためには、まず自分自身の心理的な特徴や弱点を理解することが不可欠です。
多くの被害者が陥りやすい衝動性や依存性、そして信頼しやすさといった特性は、詐欺師にとって利用しやすいポイントです。
これらの特徴に気づかずにいると、詐欺師の巧妙な手口に巻き込まれるリスクが高まります。
また、オンラインでの出会いにおいては常に慎重な姿勢を保つことが求められます。
特に感情が高まった時や孤独を感じている時こそ注意が必要です。
詐欺師は被害者の心理的な弱点に付け込んで関係を深めようとします。相手をすぐに信頼したり、個人的な情報を提供することは避けることが重要です。
少しでも不安を感じり、相手の行動に不審な点がある場合は、信頼できる友人や家族、専門家に相談しましょう。
第三者の視点からアドバイスを受けることで、詐欺に巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができます。
参考文献:Whitty MT. (2018). Do You Love Me? Psychological Characteristics of Romance Scam Victims.