「イケメン好きを治したい」という相談を受けることがあります。
初めてこの相談を受けたときは「イケメン好きは治さなければならないこと!?」と驚いたのですが同じような悩みを相談に来る人はときどきいます。
確かにイケメン好きだからといって必ず付き合えるわけではありませんから恋愛は大変になります。
イケメンしか愛せない理由は人によって異なりますからここで解決策を提示することは出来ませんが人が魅力的な外見を好ましく思う一般的な理由について説明したいと思います。
まずイケメンとはどういう顔なのかを定義しなければなりません。人によって好みは異なりますから今回は左右対称の顔(シンメトリー)がイケメンということにします。
実際に様々な調査でも異性から魅力的とされる顔はシンメトリーであるという結果が出ています。
良遺伝子仮説 – イケメンは良い遺伝子を持っている?
イケメンを好きになる説明としてよく用いられるのが「良遺伝子仮説」です。異性の選択においては遺伝上の優秀さを重視するという説です。
そして長年進化心理学の世界で支持されてきたのが顔の対称性によって遺伝子の優秀さを計っているという仮説です。
この説によると顔の対称性が崩れるのは健康問題や遺伝子変異に原因があるとされています。
つまり対称性の高い顔を持つ人(イケメン)は環境や遺伝上の問題に対応できる能力が高いという考え方です。
この仮説は進化心理学の世界において長年支持されてきましたがイギリスの研究チームの調査によって顔の対象性と健康問題の相関性はないという結果も出ています。
しかし人間を含む多くの動物が左右対称の外見に惹きつけられるというのは事実です。
その理由として脳は省エネ思考だからという説が挙げられます。シンメトリーな顔なら半分を見ただけで残りの半分は認知する手間が省けます。イケメンは脳にとって好ましい顔だから好きになるのです。
この説に関しても後々の研究で否定される可能性はありますが今のところは支持されている説です。
ハロー効果 – 顔が良ければ性格も良いだろう
人間は「ひとつの側面で望ましい特徴を持っていると他の側面も望ましいだろう」という認知の歪みを起こすことがあります。これを社会心理学ではハロー効果(光背効果・後光効果)と言います。
ハロー効果は組織の人事評価の場面などで起こることもあります。多面的に評価しなければならないときに営業成績が最高評価の人間に対しマネジメント能力も高く評価してしまう場合などです。
そして恋愛の場においてもハロー効果が起こります。イケメンを見たときに「顔が良いから性格も良いだろう」と判断するということです。
イケメンが好きという人は顔を見た瞬間に性格も自分好みだろうと判断しているのかもしれません。
しかしこのハロー効果はいつまでも続くわけではありません。イケメンだからといって性格が良いとは限りませんから内面を知る中で失望することもあります。
最初の期待が大きいとそれが裏切られたときのショックは大きくなるという効果をロス効果と言います。イケメンと付き合ってもすぐに嫌いになってしまうという人はロス効果が起こっているのかもしれません。
人間図鑑 – 嘘つきは表情が歪んでいる
嘘をつくと顔の左半分に出やすいということが言われます。
左半分かどうかは断定できませんが嘘をつくときに表情が歪んでシンメトリーが崩れる人は多いです。真顔の状態というより喋り始めの口元などに歪みが表れます。
人間は無意識のうちに人間図鑑のようなデータベースを作っています。
初めて会った人でも何となくどんな人か分かるのは過去に出会った人のデータベースに照合し似た人の特徴を当てはめているからです。
しぐさに関する心理学の知識などなくても多くの人は嘘つきが何となく分かると思います。
それはデータベースの中にある嘘つきに共通する特徴を見出しているからです。その特徴のひとつが顔がシンメトリーではないというものです。
つまりシンメトリーな顔(イケメン)を見ると嘘つきではないと安心できるのではないでしょうか?
だから好きになるのです。
イケメンが好きな人は顔の良さそのものに惹き付けられているように見えて実は脳の中では色々な予測や判断をしている可能性が高いのです。