かなり昔ですが心理学者がそれほど仲良くない相手とでもすぐに親密になれる方法を論文で発表しました。
その方法とは「36の質問」をするということです。
それから数十年経過して実際にやってみた女性が男性と本当に両思いになって付き合うことができたそうです。
その後も真似した人が続出して一時期ちょっとブームになっていました。
今回はその36の質問とやり方について説明します。
ちなみに当カウンセリングルームに相談に来た人でもやってみた人が何人かいます。その結果についても簡単に紹介します。
恋に落ちる36の質問
この方法を考案したのはアーサー・アーロン博士です。
恐怖によるドキドキを恋愛による興奮と勘違いするという「吊り橋効果」の実験を行ったことでもよく知られている心理学者です。
博士の行った実験は交互に36個の質問を出し合って最後に見つめ合うというものです。
36の質問リスト
質問する項目は以下の通りです。
- 世界中の誰でも夕食に招待できるとしたら誰を誘いますか?
- 有名になりたいですか?なりたいとしてどんな方法が良いですか?
- 電話を掛ける前に話すべきことを確認しますか?そうだとしたらそれはなぜですか?
- パーフェクトな1日とはどんな日ですか?
- 最後に1人で歌ったのはいつですか?誰かのために歌ったのはいつですか?
- 90歳まで生きられるとしたとき、30歳からの60年間を「30歳の心まま生きる」のと「30歳の体のまま生きる」のではどちらが良いですか?
- 自分がどのように死ぬかという第六感のようなものを持っていますか?
- 私たちの間にある共通点を3つ挙げてください
- 今までの生きてきた中で最も感謝していることは?
- これまで生きてきた中で変えられることがあるたとしたら何を変えたいですか?
- あなたのこれまでの人生をできるだけ詳しく4分間で説明してください
- 明日の朝目覚めたときに1つ能力を手に入れているとしたらどんなものが良いですか?
- 水晶玉があなた自身や未来、人生について教えてくれるとしたら何が知りたいですか?
- 長年持ち続けている夢はありますか?あるとしてなぜ実現されないと思いますか?
- 今までで最も大きな業績を教えてください?
- 友情において最も大切にしている価値観は何ですか?
- 最も大切な思い出は何ですか?
- 最も恐ろしい思い出は何ですか?
- 余命1年と分かったら今の生き方を変えますか?その理由も教えてください
- あなたにとって友情とは何ですか?
- 人生で愛情や思いやりはどのような役割を果たしますか?
- お互いの長所を5つ挙げてシェアしてください
- 家族は親密でしたか?子供時代はその他大勢と比べて恵まれていたと思いますか?
- 母親との関係はどうですか?
- 「私たちは」で始まる真実の文章を3つ作ってください(例:私たちはこの部屋で○○な感じを得ている)
- 次の文章を完成させてください。「私は○○な体験を共有できる相手がいたらいいなと思う」
- 私たちが親密になるとしたら伝えておきたい重要なことを教えてください
- 私のどこが好きですか?正直に答えてください。初対面では言わないような内容を言ってください。
- 最も恥ずかしかった体験を教えてください
- 最後に人前で泣いたのはいつですか?また1人で泣いたのはいつですか?
- 今の時点で私の好きなところを教えてください
- 冗談にするには深刻過ぎることはありますか?
- 今晩、誰とも会話することなく死ぬとして、伝えられずに後悔しそうなことは何ですか?それを今伝えていない理由も教えてください?
- 家が火事になったとします。家族やペットは既に救出済みです。燃える家の中から1つだけ安全に取り出すことができるとしたら何を選びますか?
- 家族の中で誰の死が最もあなたを悲しませますか?理由も教えてください
- あなたが抱えている問題の解決策を私に聞いてください。そしてその問題についてあなたがどう感じているように見えるかも聞いてください
最後に見つめ合う
回答が全て終わった後にお互いに黙って4分間見つめ合うのです。
これを全て行うと40分以上は掛かるのでちょっと大変です。
実験は初対面の人同士を被験者として行われました。
参加した被験者のおよそ3分の1が親密さが増したと回答しています。
しかもそのうちの2人がその6ヶ月後に結婚しました。
36の質問をやってみた女性のエピソード
この実験結果を2014年に実践でやってみたのがライターのマンディ・レン・カトロンという女性です。
初めて1対1で会った相手と両想いに
彼女はロッククライミングのジムで顔を合わせる程度だった大学時代の知り合いとデートをしました。
1対1で会うのはそのときが初めてです。
そこでさきほどの36の質問を試したのです。
そしてその結果見事に両思いになることが出来たというわけです。
ただし実験と異なるのはこれを行った場所がバーだったということです。
二人きりでバーに行くことを了承してくれている時点で最初から脈があった可能性が高いのです。
ニューヨークタイムズで大反響
この一連の出来事をコラムとして2015年にニューヨークタイムズに投稿したら大きな反響がありました。
そして「恋に落ちる36の質問」としてインターネット上で広まったのです。
さらにそれを見た多くの人が好きな相手に試したのです。
これに気をよくしたのかニューヨークタイムズは追加の特集で実際に試した人たちの調査を行いました。
成功した人もいれば失敗した人もいました。
そもそもこの実験を一緒にやってくれるという時点で両思いの可能性が高いのではないか……という気もしますが脈ナシでもやってくれるということです。
なぜ36の質問をすると恋に落ちるのか?
この36の質問が恋愛にどれほどの効果をもたらすのか明確にすることはできません。
そもそもこれは人工的に恋愛感情を作り出すためではなく、大学生同士の人間関係を親密にするために考案されたものなのです。
しかし異性同士が互いに好意を持つようになる要素が複数存在していると言えます。
「この人と一緒にいると心地良いな」と感じる
まず人間は自分のことを聞かれて話すのが好きです。
人間が最も好きな話題は自分のことなのです。
36個もの項目に答えていればこの欲求を満たすには十分でしょう。
アンケートに答えるときに気持ちよくなってしまうこともあります。
「この人と一緒にいると心地良いな」と感じるのです。
重要な情報を開示するほど親密になる
また項目を見れば分かりますが質問が進むにつれてセンシティブな内容になってきます。
心理学ではお互いの重要な情報を開示すればするほどに親密さは増すと言われています。(自己開示の返報性)
それに回答によって相手の新たな魅力を知ることもあります。
さらに実験をしたというそのこと自体が恋愛感情を呼び起こす可能性も考えられます。
「本当に好きになるのだろうか?」「そういえばちょっと感覚が変わったかもしれない?」など頭の中でグルグル考えているうちに意識してしまうということです。
最後に4分間も黙って瞳を見つめ合うのですから、よほど嫌いな相手でもない限りは好意的な感情が芽生える可能性は高いと思います。
やってみた人の成功率は?
私はおまじないや占いといったものは一切信じていません。
心理学の世界にいてそれを信じているようではかなりの勉強不足とさえ思っています。
とはいえ相談者から「両思いになれるおまじないはありますか?」と聞かれることがあります。
好きで好きでどうしようもなくなって最後にすがるのがおまじないなのかもしれません。
そんなときには今回の「36個の質問」を紹介しています。
そして実際に試した人がけっこういます。その結果どうなったのでしょうか?
両思いになれた人もいればなれなかった人もいます。報告してくれた人だけの確率でいえば6~7割くらいといったところだと思います。
ただし上手くいかなかったとしても「親密さは増した気がする」と言っていました。
付き合うことが出来なかったとしてもお互いをよく知ることは出来るかもしれません。
万策尽きたときに試してみる価値はあると思います。
その後も付き合い続けることはできるのか?
コラムを載せた後に執筆者であるマンディは「彼氏とはまだ続いているの?」と頻繁に聞かれたそうです。
この疑問は当然かもしれません。片思い中の人が求めるのは一時的な錯覚ではなく長期的な恋愛関係なのです。
それに対してマンディは「続いている」と答えていました。
ただしこれが大切なことなのですが、「お互いの意思で選んで恋愛をしているのです」とも答えています。
つまりきっかけは実験であったにせよ今の恋愛関係が継続しているのは錯覚ではないのだということです。
心理の錯覚によって一時的に両思いになれたとしても関係を継続できるかどうかは努力にかかっているということです。