恋愛において好きな相手の気持ちが分からないという状況は頻繁に起こります。
ただでさえ他人の気持ちというのは理解しにくいものですが、恋愛をすると脳内で冷静な判断を司る部位の働きも鈍くなりますから余計に分からなくなるのです。
特に付き合う前の曖昧な関係のときはちょっとした言動からその心理を読み取ろうとしますが余計に混乱してしまったりモヤモヤしたりします。
そんなときに使えるのが人の心を読むための心理学的なテクニックなのですが、これらは本当に使えるものからただの迷信まで数えきれないほどあります。
それらを覚えても普段から使っていないと忘れてしまうものです。
なのでテクニックを覚えるよりも相手の気持ちを読み取る能力そのものを高めるほうが良いかもしれません。
そこで今回は誰でも簡単にできる相手の気持ちを読む能力を高めるトレーニング方法を紹介します。
純文学を読むと共感力が上がって相手の気持ちが分かるようになる
最初に紹介する方法は純文学を読むという非常にシンプルなものです。
複雑な感情を持った登場人物を見ることでトレーニングになる
ニュースクール大学が実験参加者に純文学を読ませたところ、ノンフィクションや大衆文学を読んだ人よりもその後の他人の気持ちを理解するテストで良いスコアを獲得しました。
純文学には複雑な感情を持った登場人物が出てきます。
それにも関わらず心情などを明確に書いてないことが多いため、それまでの出来事や地の文で表現された周りの環境などから読者が登場人物の心情を推測する必要があります。
そういった読書の仕方をしていると人の心を読むトレーニングになり相手の気持ちが分かるようになるのです。
それと純文学では感情を表現するための様々な表現が使用されています。これらの表現を自分でも使えるようになると自分の感情をコントロールすることにも役立ちます。
なぜなら感情を表現する語彙が増えると自分の心の状態を明確に言語化できるため怒りを抑えやすくなるからです。
そもそも純文学とは
純文学を読むと相手の気持ちを読む能力も高まるという話を知人にしたところ「純文学って何?」と聞かれたことがあるので補足しておきます。
純文学というのは「娯楽性」よりも「芸術性」を重視する小説などと説明されますが、具体的な作家名を挙げるなら夏目漱石などです。
現在の作家の作品を探すなら『文學界』や『すばる』といった文芸誌に掲載されるようなものが良いと思います。
映画鑑賞でも相手の気持ちが読み取れる
次に紹介する相手の気持ちを理解するためのトレーニングは映画を見るというものです。
大衆的なハリウッド映画か?芸術的な映画か?
読書ではなく映画鑑賞でも相手の気持ちを読む能力は高められるのではないか?ということをイタリアのトレント大学の研究者が実験で調べています。
この実験では参加者に大衆的なハリウッド映画と芸術的な映画のどちらかを見せました。
ここで採用された大衆的な映画というのは『ワイルドスピード』『パイレーツ・オブ・カリビアン』などです。
芸術的な映画というのは『トスカーナの贋作』『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』などです。
これらの映画のどれか一つをランダムに割り当てて参加者に見せました。このとき登場人物の心情などを考えながら見てもらいました。
芸術的な映画を見せられた参加者は相手の気持ちが読める
映画を視聴した後で参加者には他人の気持ちを読み取るテストを受けてもらいました。
「道徳的判断課題」というストーリーから登場人物の意図を読み解く能力をテストするものと、「Reading the Mind in the Eyes Test (RMET)」という目の写真を見てその人の感情を判断するテストです。
この2つのテストを受けてもらったところ、大衆映画を見せられた参加者よりも芸術的な映画を見せられた参加者のほうがスコアが高く出ました。
つまり人の気持ちをきちんと読めたということです。
なぜ映画鑑賞で心が読めるようになったのか?
なぜ芸術的な映画を見た参加者のほうが人の気持ちを読むテストのスコアが良かったのでしょうか?
それは芸術的な映画のほうが登場人物の心情が複雑なため、それを読もうとすることで人の気持ちを読む能力が高まったからと考えられます。
つまり相手の気持ちが分かるようになりたい人は複雑な心情を持つ登場人物が出てくる芸術的な映画を見ると良いということです。
相手の目を見る習慣を身に着ける
最後に紹介する方法は日常的に相手の目を見る習慣を身に着けるというものです。それによって相手の心が読めるようになります。
イスラエルのテルアビブ大学が面白い実験をしています。
ちなみに日本ではあまり知られていませんがテルアビブ大学はイスラエルの名門大学で、教授1人あたりの論文が引用された本数は世界でも上位の大学です。
そして今回紹介するのはこの大学の心理学と神経科学の研究者が行った実験です。
相手の目を見る習慣のある人ほど心が読める
この実験でもさきほどの映画の実験と同じ「RMET:Reading the Mind in the Eyes test」という目から感情を読むテストを行っています。
このテストを実験の参加者にやってもらったのですが、このときに「あなたは普段どれくらい人の目を見ますか?」ということもアンケートしました。
その結果どうなったかというと、普段から人の目を見る人のほうがテストのスコアが良かったのです。
つまり普段から人の目を見る人は感情を読むのが得意ということです。
普段から目を見て会話をしているとそれがトレーニングになり「こういう目をしているときはこういう感情なんだ」と分かるようになるのです。
目を見るのが恥ずかしい人でも今はチャンス
相手の気持ちを読めるようになりたければ、普段から目を見る習慣を身につけましょうということなのですが…恥ずかしくて出来ないという人もいると思います。
そんな人でも実は今はチャンスなのです。なぜならここ数年でマスクをしている人が増えたからです。目をじっくり見ても不自然になりません
実は今回の実験ではもう一つアンケートしていたことがあります。
それは「あなたは普段マスクをしている人と会う機会はどれくらいありますか?」ということです。
その結果、マスクをしている人と会う機会が多い人ほど、目から感情を読むテストのスコアが良いということも分かりました。
マスクで顔が隠れて目しか出ていないため、目を見る機会が必然的に多くなったということです。
なので世界中の人がこのコロナ禍によって相手の気持ちを読む能力が高くなった可能性もあるのです。(残念ながら人と会う機会が減り心を読む能力が低下したという調査結果もあります)
ちなみにオクラホマ大学の研究によると普段から相手の気持ちを読もうと考えている人は実際に気持ちを読む能力が高いということも分かっています。
参考文献
・David Comer Kidd, Emanuele Castano.(2013).Reading Literary Fiction Improves Theory of Mind.
・Emanuele Castano. (2021). Art films foster theory of mind.
・Trainin Nitzan, Yeshurun Yaara. (2021). Reading the mind with a mask? Improvement in reading the mind in the eyes during the COVID-19 pandemic.
・Jessica E. Black, Jennifer L. Barnes. (2015). The effects of reading material on social and non-social cognition.